2013年12月4日水曜日

#313 1000日目の被災地

比較的暖かな朝を迎える。気温は決して高くはないが、風が吹いていないので存外過ごしやすい。そういえば、2年前住田、大船渡もそうだったっけ...いつものように準備して、いつものように出勤する。

必要な資料を印刷し、I主事とともに歌津の現場に向かう。春のような暖かさ、そして波もとても穏やか。こんな日が続くことを心から願うが、そうもいかないだろう。300個目のブロックが据え付けられた。
丁度一服の時間になったので、チーム白老といろいろ話をする。貝はカレーに入れるとおいしいなど、未知の文化について話を聞く。以前は自分が現場に行くと整列して待っていてくれるという宮城流だったが、今はすっかり打ち解けた。親方から「来週帰ります(笑)」とかいろいろ脅されるが、チーム白老あっての、この現場だと思う。

漁港の岸壁には、Iという施工予定箇所の関係者である漁師さん一家が作業中。ホヤの養殖に使うカキ殻の清掃を行っていた。息子さんから「新聞見たけど大変だっちゃね~」と労らってもらった。明日はアワビの開口だそうで、説明は来週以降に持ち越しとなった。

引き続き、近所の関係者宅をお邪魔して事業説明をする。「波来の地」の石碑より上にあるこの家は、幸いにも被災していない。集会場などにたくさんの方々にお集まりいただいて説明をするのも一つの手段だが、こうやって丁寧にじっくりお話を聞いていただくのも、よい方法だと思う。
説明を終え外に出ると、「くーちゃん」と呼ばれる丸々としたネコが寄ってきた。臆病なので少し腰が引けているが、呼んだら近づいてきた。少し自分の愛猫について語ってみたところ、「長生きですね!」と驚かれる。確かに、もう17歳...
弁当を注文していなかったので、売店でカップヌードルとパンを買い求める。すると、お客さんが自分のネックストラップを見て興味を持ってくれた。「これは大島のキャラクターで、こっちは唐桑で...」少し場違いなものを身に着けているが、会話のきっかけになれば本望である。売店の方とも初めて話をする。気仙沼と南三陸への愛着を伝えておく。

午後、まずT班長に状況報告する。大きな声で話しておけば、自分が今、どんなステータスであるか耳に入ってくれるかな...明日の打合せの準備や来客対応、変更契約の手続きなどを急ぐ。

業務終了後、こけしへ行こうとするも定休日。エスポワールにスイッチしていつものパスタセットを注文する。店主のママが、「今日は20時からライブをしますので、よかったら聴いていってくださいね!」と声を掛けてくださった。折角なので拝聴することに。
男性3人のユニットで、エレキギターを中心とした曲を演奏する。それほど大きくないお店だが、かえって一体感を生み出しているようで、それもまた楽しい。1時間ほどで演奏が終わり、店を後にする。バンドのメンバーの一人が「ありがとうございます!」と。よく見かけるお客さんだったが、こういった特技があるのは素晴らしいと思った。

帰宅後、熊野の友人が送ってくれたミカンを受領する。最近ミカンに恵まれすぎて、この上なく幸せである。人はミカンがあれば生きていけるのではないかと思う。

震災から今日で1000日が経過した。春のような日和の中での出来事は、震災を忘れてしまうぐらいに穏やかなものだった。この街に、何気ない日常がいつまでも続くことを祈念する。