2013年5月31日金曜日

#126 自分たちのペース

初夏、といった雰囲気の明るい朝を迎えた。遠方へ出張するため、1時間早く出勤する。昨日遅かったので若干辛くもあるが、自業自得。若さ(?)で乗り切る。

鍵を受け取ろうと守衛室に立ち寄ると、既に誰かが来ている。A総括が既に出勤されていた。今の所属では、農林振興部長の次のポストに座られる方だが、宮城のルールとはいえ、かなりの雑務も引き受けてくださっている。寡黙の中に芯の太さを感じる頼もしい上司である。

そういえば、昨日T班長が「一人で遠くへ行かせるのは申し訳ない。誰か一緒に行ければいいんだけど...」と仰っていた。自分は「もう大人だから大丈夫!」などとおどけて見せたが、受け入れる側からすれば、大切な職員をお預かりしている、と思われているのだと感じた。

ラベンダー色が目にまぶしいカローラ・フィールダーで一路東松島市へと出発する。類似の車両が複数あり、登録年次とナンバープレートの番号が一致しないことから、トヨタ自動車から寄贈をうけた車両だと思われる。トヨタ自動車の皆様に感謝いたしたい。

窓を開けて走ると、爽やかな風が吹き込んでくる。本吉から内陸に入り、登米東和ICから三陸道にのる。ここから鳴瀬奥松島ICまで無料区間となっていることから、多数の10tダンプが資材を満載して走っている。ダンプはこの道路にふさわしい速度での走行が困難なため、車間距離が詰まり数珠つなぎとなる。
この道路のおかげで、不足する資材を若干遠い場所から運搬することが可能となった。反面、都市間を移動する利用者にとっては、高速道路としてのメリットが大幅に減じられてしまっている。石巻に近づいてくるとその状況が顕著になり、渋滞直前のような状態になる。一部4車線化工事も行われてはいるが、当面はこの状況を理解するしかない。

石巻港ICで降り、目的地である矢本海浜公園へ。沿岸部に近づくと徐々に工事現場さながらの状況になる。工事用道路と勘違いして曲がり損ねた道が、実は行きたかった道。カーナビに救われる。
北上運河沿いに走ると、やたら広大な土地が現れる。矢本海浜公園だが、現在は営業を停止しており、工事のストックヤードや土の仮置場となっている。
目的地は目印も特になく、付近の駐車場で行き先を同じくする感じのクルマを見つけ、ホッとする。

震災後の防災林造成にあたって、理想的な種苗の選択、植栽環境の整備を図るために、800m2ほどの試験区を設けて調査が行われている。今回は植栽木の生長量調査が行われるため、その見学にやってきた。
試験区の整備は、宮城県林業公社を事務局とする「海岸防災林の再生を考える会」が行っており、会員には林業関係団体のほか、緑化資材を取り扱うメーカーなども参加している。
全景
試験区は大きく2つに分かれ、一つは緑化資材の定着状況の検証、もう一つは苗の種類、植栽間隔、防風垣の有無を検証するものである。
植栽されている樹種はクロマツが主体で、一部に広葉樹(コナラなど)がある。どの試験区でも明確な差は見受けられないように感じた。そうなると、あとは施工コストと手間が勝負になるのか...
一部、枯死したと思われる苗を見かけた。参加者の話では、試験区の前面に工事用仮設道が設けられているため、走行する車両によって巻き上げられるチリによって窒息したのでは?とのことだった。
試験区周辺は大曲浜と呼ばれるところで、背後には航空自衛隊松島基地が控えている、震災前は松林があったが、現在では一部を残すだけとなっている。
参加者の一人、県庁治山班のS主任主査に諸々お礼を述べてかつ少しこの場所について話を伺う。海岸線に沿っておよそ5kmの防潮堤が整備されており、直立堤、土堤、人工砂丘などが存在していたが、今後はかさ上げと同時に統一される予定。
試験地の脇にあるマツ林では、新たなマツが生えてきている。しかし、直根の成長を考慮すると、盛り土ののち、植林という流れになってしまうかも…
残ったマツ、倒れたマツ
調査終了後、防潮堤の状況を確認する。試験区周辺の直立堤も被災していないが、西側にある土堤もぱっと見た限り健全な状態だった。
また、突堤のコンクリートブロックも健全な状態を保っている。昨今、いわゆる生コンの需給がひっ迫しているため、こういった2次製品の活用が積極的に行われることになる。
海岸には様々な物が打ち上げられていた。
明らかに住宅用と思われる木材
玉切られた丸太も見られる
そして、海浜公園周辺...
変形した遊具が切ない
集められる被災木
石巻港ICへ向かう途中、河川堤防の施工予定高さを表示する丁張と、事業説明看板を見かけた。こういった分かりやすい事業説明、とても重要である。
三陸道の河北ICで降り、遅めの昼食をとるため、道の駅上品(じょうぼん)の郷へ。木造の巨大な構造物が興味深い。
ざるうどんを食べ、喫煙していると僧侶風の方から声を掛けられた。京都から来られ、宮古から8日かけて「上って」きたとのこと。三重出身と伝えると、この方も津生まれとのこと。それだけで親近感が湧くから不思議だ。

三陸道に戻らず45号線を北上する。交通量も少なく信号もほとんどないので走りやすい。むしろこちらのほうが時間短縮になりそうな...

南三陸町歌津の現場状況を確認し、現場事務所で少し打合せ。進捗は極めて順調だが、こちら側の課題を少し伝える。ハイパー代理人S氏に迷惑をかけてはいけないので、打開策を考えないと...

合庁に戻り、課題解決についてH技査とすこしディスカッションする。代えられること、代えられないこと、異なるアプローチなどなど...話をしている途中で気付いたのだが、どうも班内で情報共有がうまくいっていないことが分かった。

業務終了後、歯医者と床屋のダブルヘッダーを決める。Jr先生から「どんなクルマが好きなんですか?」と聞かれ、「速いセダンが...」と答える。自分のライフスタイルを考えると、フォレスターなどのクロスオーバーが向いていると思うのだが、やはりメカ的に特徴のあるクルマが好きだ。本当はM3のセダンが欲しいんだけど...MT命、アルファのブレラにも乗っていたJr先生とはいつもクルマの話で盛り上がる。

そして、コマツの母の元へ。「なんでそんなに人がいるのかねぇ?」という母ならではの直球な質問に、業務の内容や組織、事業者と行政との役割分担など説明する。そして、外食禁止と諌められ...
こちらの都合で母に残業を強いてしまったことを反省し。
夕食は久々のこけしへ。ようやく中華丼を食べることができた。

帰宅後、洗濯などをしながらNHKスペシャル、「"応援職員"被災地を走る~岩手県大槌町~」を視聴する。埼玉から派遣された、土地区画整理事業に携わる職員の奮闘をまとめたものだ。

2ヶ月経った今、主人公の活躍を目の当たりにすると、今の自分は残念ながら足元にも及ばない。また、色々前に進めようと、強引に三重流を持ち込むと、組織が修復できないレベルまで危険な状況に陥ってしまうかもしれない。まだ円滑とはいいにくいコミュニケーションも、時間以外に解決することが出来ない。
テレビで伝えらえるような状況とは程遠い今の状況。しかし、それぞれの事情がある。これからも、宮城的なペースで前に進んでいこう。