2013年4月11日木曜日

#76 技術的視点

天気予報では、山間部では積雪の可能性があるので、冬用の装備で...と伝えている。4月11日なのに、若干理解に苦しむ。やはり本日もパッチをはいて出勤する。

午前中は、唐桑半島にある現場に向かう。旧本吉郡唐桑町は、平成の大合併により隣接する気仙沼市と合併し、その後新設の気仙沼市は、本吉郡本吉町を編入している。
この現場では、コンクリート製の防潮堤が破壊されているため、かさ上げと再整備を行うことになる。昭和47年に製作されたコンクリート製の壁は、引き倒されるように海側へ転倒している。

ここに限らず、コンクリート製の構造物は打継で切断されているケースが多い。現場条件や生コンクリートの性質、割れの防止の観点から、こういった構造物には鉛直なり水平なりの打継がどうしても必要となる。打継はウイークポイントとなってしまうため、ここから転倒してしまう。
現在では、打継面に鉄筋を挿入したり、階段状に処理を行うことにより、弱点を克服する工夫がなされている。

帰路、高台の公園にある公衆トイレに向かうと、「津波用心」と書かれた案内を見かける。明治と昭和の三陸地震津波についての歴史が書かれている。
山口弥一郎著の「津浪と村」に、ここには「かよう坂」や「牛込」、「ほや畑」などの津波に起因した地名があるとあった。改めて確認を行ってみたい。
非ライブカメラ
パッチいらずの陽気となった午後、事務所で設計内容の確認を行う。コンクリート構造物を設計する際、安定計算と呼ぶ作業が行われる。構造物の滑動と転倒に対する安全性が満たされているかどうかチェックを行うもの。山で行われる治山施設などは、構造物の断面がシンプルなため、全国的に流通している、書籍に付属していたエクセルファイルを利用することにより、あっという間に結果が導かれる。
防潮堤は断面が複雑なため、自分の知っているアプローチとは異なる内容となっていた。答えを導くところは同一だが、繙くのに時間がかかってしまった...

夕方、定例の掃除となる。大船渡市役所時代は、毎月11日に避難路などの確認を行うようにというU係長からの注意喚起があった。今の職場ではそのようなことは行われないが、自分なりにチェックしておこう。

業務終了後、大船渡に向かう。
途中、陸前高田の星石油店で久々に給油。「前、FJクルーザーで来られましたよね?」と店員さんに聞かれた。覚えていてくれたことが嬉しい。以前は現金のみだったこのスタンドも、クレジットカードが使えるようになっており、前に進んだ感が著しい。
ハイオク167円とやや高めだが、星石油店だと無条件に許してしまう自分がいる。

盛のサン・リア近くにある千秋庵に到着した旨を告げると、店の中に案内される。当初想定していた3名ではなく、ズラッと人が並んでいる...
大船渡市役所派遣時代にお世話になった、岩手県大船渡農林振興センターのO氏のお招きにより、職場の親睦会になぜかめり込ませていただく。センターの職員だけでなく、準会員という名で関わりの深い方が招かれていた。
もうかのほし
治山事業経験の豊富なK氏、そしてO氏と、治山施設の話になる。東日本大震災や過去の災害などにより、施設が破壊されてしまう場合がある。ただ、破壊されたとしても、守るべき保全対象が被災していなければ、それは十二分に機能を発揮したことになるという話になった。クルマで例えるところの、衝突時のクラッシャブル・ゾーン。
施設は治すことが出来るが、失われた命は取り戻すことが出来ない。

他にも、森林・林業行政にかかわることや、お国自慢など、林業技師ならではの充実したひと時となり、一本締めでお開きと...ならず、しばし談笑。O氏には、新たに整備された陸前高田市のプレカット工場などご案内いただけそうだ。

国道45号線を南下。大船渡市の野々田周辺はたくさんの店や家が出来つつある。そして、陸前高田では、キャピタルホテル1000が解体済み。街は、少しずつ、一歩ずつ前に進んでいる。