2013年5月11日土曜日

#106 過去を紐解く

休日は8時半に目覚ましをセットしているが、当然全力で無視し、結局昼前にもそもそと起床する。まだ雨はほとんど降っていないようだが、今日はあいにくの天気である。
朝食兼昼食をどん兵衛芋煮バージョンで済ませ、身支度を整えてベースキャンプを発つ。雨脚が強くなってきた。

ひとまず、大川のサクラ移植予定現場に向かう。気仙沼市内を流れる大川には桜並木があり、市民の憩いの場だったそうだが、津波による塩害で多くが枯損し、また堤防のかさ上げ工事の支障になる生存木も伐倒される。今日の三陸新報によると、そのうち7本は場所は未定だが移植されることが決定したとのこと。

サクラを一目見ようと、大川左岸を下るものの、肝心の川沿いの道にたどり着くことが出来ない。いくつか近づくための道路があるものの、自分が走っている道がかさ上げされているために曲がることが出来ない。被災地ではカーナビが役に立たないケースが往々にしてある。

なんとか交差点を見つけ、川沿いの道に出る。数本、「こも」が巻かれ、枝の剪定がなされた木を見つける。

写真を撮っていると、散歩をしていた老爺から声を掛けられた。川の対岸、ベースキャンプもある南郷地区の南気仙沼小学校近くに家があったが、現在は仮設住宅にお住いとのこと。気仙沼大川桜並木を保全する会の役員をされているそうで、桜並木に特別な思いを持たれていた。震災当日の地震発生直後は、小学校と対岸を結ぶ大川にかかる歩道橋の上に居られたそうで、その後児童の避難にご尽力されたとおっしゃっていた。

堤防が完成すると、2階の窓からさえ川を見ることが出来なくなってしまうが、景観の大きな変化については特にコメントされることはなかった。
明日は6時から草刈り作業をされるそうだが、雨が降り続いているため、どうなるのか未定とのこと。6時から草刈り...参加したくても、自身の活動可能時間帯から外れてしまっている(汗

その後、市立図書館に向かう。高台にあるため被災しておらず、貴重な図書も流されていない。
古い街の図書館という趣きが漂っており、中に入るときも靴を脱いでスリッパに履き替える。今日は雨が降っているからか、そこそこ来館者で賑わっている。
入り口近くの一角は東日本大震災コーナーになっているが、その隣は水産や造船といった海に関する書籍が並べられており、さすが港町気仙沼と感心する。

ひとまず郷土資料コーナーへ。チリ地震津波の報告書など見つけられないかと思ったが、あいにく存在せず、気仙沼線関連の書籍や、「わたしたちの気仙沼市」という、小学校社会科の副読本を見る。ちなみに四日市市は「のびゆく四日市」という副読本があり、四日市出身ならだれもが知っている。
副読本で特筆すべきは、津波のことが記載されていたことだ。今回手に取ったのは昭和50年発行のオリジナルだが、情報の伝達方法や関係機関の役割などが書かれている。

そして、「気仙沼史考 地名の発掘」という本を見つける。元、地元小中学校の教諭であり、地元の郷土史家である小山正平氏が提唱するのは、気仙沼は計仙麻(ケセマ)が改められたもの(これは史実)で、ケセマという言葉の意味としては、リアス式の磯という意味であり、この地方にはケセやケセマと名のついているところが比較的多いとのこと。

この本の冒頭には、日本の地名は話し言葉に後から漢字を当てたものが多いため、本来の「読み」が持つ意味を読み解くことが困難であると書かれている。図らずも、紀宝の師匠が全く同じことをおっしゃっていた。そして、師匠から命じられた宿題をまだ手掛けていないことも、よくわかっている...

「三陸鉄道気仙沼線」という本は、国鉄気仙沼線が開通した1977年に発行されたものと思われるが、沿線の市町村について簡単に紹介されており、この地方では既に40年前から、加速度的な人口減少に悩まされていたことが分かった。
裏表紙には「南三陸シーサイドパレス」というレジャー施設の広告が掲載されている。旧本吉町で1972年に開業し、ボーリング場や遊園地、宿泊施設を備えた場所だったが、震災前には既に廃墟となっていた。
画面中央の建物 2011年7月撮影
レジャー施設の開設や気仙沼線の開業、1970年代のこの地方は、チリ地震津波のからの復興で、いろいろと盛り上がりを見せていたのだろうか...

時間切れでいろいろ読み切れず、前から読みたかった「ケセン語入門」を含め、何冊か本を借りてきた。貸出期間は2週間。たぶん読み切れないだろう。
図書館を出、しばらく何の音さたもなかった、エビナさんのところへ向かう。頼んであったモノは届いていたが、もろもろ手続きにまだ時間がかかりそう。こちらの来て感じるのが、仕事、プライベート問わず、頼んであったことが放置されることがままある。その人の性格なのか、この地方の気質なのか...もちろん、自分もやってしまうこともあるし、三重でもそうなることはあるが...

大型ショッピングセンターに寄り、本屋さんに寄ってから、眼鏡のおんちゃんのいる店で、非常にジャンキーな鶏のフライを買って、晩御飯にする。久々に食べるのでおいしいかな?と思ったが、しばらく買うのは止めよう。