2014年6月17日火曜日

#508 ここは宮手県

昨晩から断食しており、お腹が減って仕方ない...と思いきや、さほど空腹に苛まれてはいなかった。むしろ、いつもより1時間以上早く起きなければならないことが苦痛だった。朝食も食べずというか食べられず、3号機で出発する。

45号線、346号線を通って登米市へ。途中は流れも良かったが、登米市迫町に入ったころから流れが悪くなり、結局10分ほど遅れて登米市民病院に到着した。急ぎ問診表を書いて、窓口に提出する。
人間ドックの受診者は自分以外におらず、腹部エコーを行った後に着替えを促されるなど、少し不思議な段取りとなっていた。三重では別の病院で2回受診したが、ドック受診者と一般外来は動線が完全に分けられており、顔を合わせることもなかったが、この病院ではそのようなシステムを採用していなかった。

腹部エコーを終え、早速胃カメラとなる。20年ほど前に悲惨な思いをして以来、2度と胃カメラを飲まないと誓っていたのだが、ぬかった。この病院が胃カメラだということをチェックしていなかった。時すでに遅し。
待合室に入ると、「胃カメラは決して苦しくありません」と貼り紙がしてある。むしろ、そのメッセージが恐怖感を高めている。施術室に入ると、「マルマルモリモリ」と音楽が流れている。苦痛を和らげるための音楽が、さらに恐怖感を高めた・・・
何度も繰り返される嗚咽に、涙が出てきた。健康のありがたさを痛感した。

採血を行っている看護師さんから、「気仙沼の状況はどうですか?」と尋ねられる。隣町なのに、あまり状況は的確に伝わっていないようだ。少し悲しくもあるが、それが現実なんだろう。

引き続き、視力、聴力、肺活量、心電図などをとり、検査終了となる。先生と面談すると、胃に若干の炎症が見られるが、問題ないとのことだった。「肩身が狭い思いをしてるんじゃない?」と聞かれたが、意外にそうではないと伝える。

その後、栄養相談と銘打ち、栄養士の方と話をする。昼食には早い時間だな…と思っていたら、渡されたのはパンと飲み物。三重の人間ドックは豪華な昼食が売りだが、そのギャップに驚く。苦痛を乗り越えたご褒美がこれだと、少し悲しい。
午後からも休みを取ったので、登米市迫町を少し散策。梅雨の晴れ間で少し蒸し暑い。沿岸はひんやりとしているが、内陸は三重と変わらないような感じがする。
宮城県登米合庁
そして、登米市南方の道の駅で昼食を摂る。バイキングが売りだが、あまり好きではないので牛丼に。栄養士の指導に基づき、主食以外にも注力する。
美味
長沼に向かおうと思ったが、途中に花菖蒲の郷公園があったので立ち寄る。
 すべてが咲きそろっているというわけではなかったが、よく手入れされている庭園はきれいだった。
○○に刈られている
駐車場で植木を刈りそろえていたずんず(南三陸方言でおじいさんのこと)と少し立ち話をした。
菖蒲園は灌水施設にトラブルが発生したために、生育が今一つとのことだった。また、来週は祭が開催されるので、賑わうそう。
合わせて、地震の話も聞いた。津波の被災地にどうしても注目が集まってしまうが、ここ南方でも家屋の大規模な損壊があり、複数の世帯が住宅の再建を行っているとのことだった。また、道路も至る所で破損、田畑も同様だった。
刈られずに保全されていたヤマユリ
また、公園内にあったレストランは、施設が被災したために休業を余儀なくされている。現在は修復がなったが、レストランが復旧するかどうかは定かではなかった。
仕事で愛知に長く行かれていたとのことで、地元ネタでも話が弾んだ。

広大な平野をひた走る。この沃野も地震の被害を免れなかった。
引き続き、長沼へ。
漕艇場にもなっている
5月31日、宮城県政の1ページを飾る大規模プロジェクト、長沼ダムが竣工を迎えた。日本最大のアースダムで、総工費834億円、43年の歳月を費やしている。
堤長が半端ない
水門
提外は緑化され、違和感がない
カスリーン台風やアイオン台風が被害をもたらしたこの地。水害から生命財産を保全するという機能も有するこのダム、かなりの紆余曲折があったようだが、晴れて完成を迎えた。三陸沿岸で進められている防潮堤よりもはるかに長いタイムスケールで行われた事業だが、どちらが良いかという議論は、ここではやめておこう。

田園風景をひた走る。走りなれない道なので、ところどころで立ち止まって地図を見ながら道を選ぶ。こういった作業も、また楽しくもあり。久しぶりに、何かから解き放たれたように、とてもリフレッシュしている。
このまま千厩へ向かい、講習を受講する。2コマ目からN技師が合流するが、業務上のことでこちらの動揺を誘う発言をする。うう…しかし、めげずに講習を完遂する。
N技師からの飲みに行こうという甘言を振り払い、ひとまず夕食を取るためにあさひやへ。
濃厚すぎたオムハヤシ
店内に、「ここは宮手県」と書かれたポスターが貼ってある。特に千厩は気仙沼と密接につながっている。合理的であれば、人の行き来に県境は関係ない。ただ、得られる情報は岩手、宮城と明確に区分されている。このボーダーをうまく取り去ることが出来れば、何か新しい価値が生まれるのではないか...

食事を終え、284号線を気仙沼へと戻る。新月のトンネルを超えたころから、バイザーが曇り始める。内陸と沿岸では、気候が異なることを改めて実感した。